山口郁子写真展「残滓」
2023.5.20(土)〜5.21(日)
那覇ブロードウェイ(那覇市牧志3-3-8)


初めての個展をおこなうこととなりました。

技術が進歩し、もはや片手で写真が撮影できるようになった時代、
簡単さと面倒さの中間を彷徨うことはできないかと考え始めました。
そこで出会ったのがピンホールカメラでした。

カメラのボディフィルターに小さな穴を開けピンホールレンズを作り、
それをデジタルカメラに装着します。
手作りといっても、ものの5分で制作できてしまうのですが、
撮影では、小さな穴に外の光をめいっぱい取り込まなければならないため、
三脚でカメラを固定し、10秒〜20秒シャッターを開けておきます。

映し出されるのは焦点の浅い微睡のような像です。
カメラ内に潜むカビさえも愛しくなるような、時間を丁寧に感じ取る行為だと思っています。

ピンホールカメラを知って以来、私は中古家電ショップに並ぶ、
誰かにとっては撮影の役目を終えたデジタルカメラに対し、
ピンホールレンズを装着し撮影を続けています。
ジャンクコーナーのショーケースで時を止めたデジタルカメラからは、
まるで残り香のように、映像を導き出しています。

同じくして、2023年3月19日、
那覇市牧志にある牧志公設市場は3年の時を経てリニューアルオープンしました。
連日観光客で大賑わいの市場も、
リニューアル工事の間は約100メートル先のにぎわい広場に仮設市場を建設し営業していました。

この日で役目を終えた仮設市場は、5月15日から解体作業に入ります。
時を止めた姿を、ピンホールカメラで撮影しました。

解体されたあとは、ふたたび公園に戻ります。
あの道を曲がると見える姿は、もう無くなります。
仮設なのだから消えるのは当たり前かもしれません。
その頃には人々の記憶からもその姿はすっかり消えてしまっていることでしょう。​​​​​​​

ですが存在していたというその残滓を写し取っておきたい、そんな思いを持って作りました。
どうぞ、ご高覧ください。
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